Zhou Tiehai: Placebo and Tonic (ザオ・ティエハイ:偽薬と強壮剤)

ZT3

2001年4月26日 ー 6月2日

キュレーター:清水敏男

アーティスト:ザオ・ティエハイ

イセ文化基金アジアアートシリーズ第4回は、上海のアーティスト周鉄海(Zhou Tiehai)です。周鉄海は上海大学美術学部で学んだ後しばらくは作家活動を停止していましたが1990年代半ばに作家活動を再開します。それは欧米のジャーナリスト、キュレーターの間で中国現代美術に関心を持つ人々が現れ始めた頃のことでした。

周鉄海は国際舞台に中国人作家が登場しつつあった当時の状況を注意深く観察しました。そこで気付いたことは、中国現代美術は欧米の主流を手本に西欧美術に喰い込もうとしているが、それは本当の美術として受け入れられている訳ではない、中国現代美術の役割とは、欧米において偽薬(Placebo)のような働きをする事ではないか、ということです。つまり、効き目の無い(=主流の美術ではない)が、薬だと言って医師が処方すれば効いてしまうこともある代物と同じなのです。

20世紀末の10年は、倦怠感に包まれた西欧美術が自分自身を治療するために世界各地の美術を渉猟しはじめます。アフリカ、アジア、アセアニア、アメリカなど世界のすみずみまでジャーナリストやキュレーターは出かけて行き、それまで西欧の規範では美術とされなかった呪術から西欧と各地の伝統を混合した美術、ローカルな近代美術にいたるまで、さまざまな表現を求めてアーティスト探しに躍起になりました。 それらは西欧の伝統が築いてきた美術とはほど遠いものでした。しかし西欧人は偽薬であろうとも、それを飲まずにはいられないほどの健康状態だったのです。周鉄海はその事情を知った時から上海に工房を築き、偽薬を世界各地に送り始めました。周鉄海の仕事はいかなる偽薬を生産するかを決める市場調査、偽薬の設計技師、生産工程の管理者です。世界のどこにどのような偽薬を送り込めば効果があるかを常に考えながら、携帯電話を手に上海で日々多忙に過ごしています。この偽薬は主に駱駝(キャメル)の姿をしています。

ところでもう一つの薬は強壮剤(Tonic)です。これは最近周鉄海が製造を始めた薬です。中国人が毎日健康のために飲む民間薬。こちらは効き目があることになっていますが、しかしそれもまた心理的な効果の方が大きな薬ではないでしょうか。この薬は、西欧かを恐れる中国人、西欧化に乗り遅れた中国人に効き目がある薬です。こちらの薬は伝統的な中国水墨画の姿をしています。しかし良く見ると現代化された絵画はアクリル絵具でキャンバスに描かれています。やはり、伝統的な強壮剤も西欧化の波に勝てないようです。

今回、周鉄海は初めて偽薬と強壮剤の効き目をニューヨークで試します。

評論:The New York Times, May 25, 2001, by Holland Cotter

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